パタゴニア創業者のシュイナード氏の全資産を環境活動に寄贈する決断。カギは「IRC501(c)(4)団体」の活用。富裕層と貧困層の分断社会を改革する「新しい資本主義」の実践例の一つ(RIEF)
2022-09-18 23:06:53
(写真は、自宅のあるワイオミング州で、パタゴニアの従業員向けのビデオ制作を行うシュイナード氏=New York Timesから)

スキームを組成したBDT&Co.,のパートナー、ダン・モスレー(Dan Mosley)氏は「シュイナード氏とその家族らは、環境貢献活動を強めることでかなりのコストを負うが、彼らはパタゴニアを自らの原則に真に沿う形にすることで、環境活動への対応を確保することを優先した。他の富裕層のように資産の非課税扱いを優先するのではなく」と説明している。
同様のスキームとしては、共和党支持者の億万長者として知られるバー・セイド(Barre Seid)氏が自らのエレクトリック会社のTripp Tite社を、「Marble Freedom Trust」と呼ぶ信託に寄贈、同信託が2021年に同社をアメリカン・アイリッシュ電力企業のEatonに16億5000万㌦で売却し、その資金を共和党への政治献金に活用しているケースがある。ただ同氏の場合、共和党に対して気候変動行動を阻止する政策への支援金の供給で、シュイナード氏とは逆の狙いといえる。

ネット上の「Inside Philanthropy」の創設者のDavid Challahan氏は、シュイナード氏の取り組みの大胆さを賞賛する。「多くの富裕層は自らの純資産のほんのわずかを寄贈するだけだ。マイクロソフトのビル・ゲイツ夫妻とウォーレン・バフェット氏が始めた寄付啓蒙活動の『ギビング・プレッジ(Giving Pledge)』に署名している富裕層も、それほどの寄付はせず、毎年、もっと金持ちになることを優先している」と指摘している。 パタゴニアはすでにHoldfast Collectiveに対して5000万㌦を寄贈しており、さらに今年中に1億㌦を提供する予定だ。
シュイナード氏は「今回の試みが、少数の富裕層と、多くの貧困層という分断された社会構造を改革する『新しい資本主義』の形に影響を与えることを期待している。われわれは、この地球を守るために活動する人々に最大限の資金を提供していく」と位置付けている。「新しい資本主義」の概念は、日本でも岸田政権が「成長と分配の好循環」等と称して提唱しているが、シュイナード氏のスキームの導入も検証してみるべきだろう。
シュイナード氏は83歳。同氏はニューヨークタイムズ紙のインタビューに答えて、「私はビジネスマンになるつもりはなかった。今や、私が明日死んでも、企業(パタゴニア)は今後少なくとも50年間は正しいことをし続けることができる。私がそこにいなくてもだ」と今回の決断の狙いを述べている。

































Research Institute for Environmental Finance